夏に入ってしばらくしてから、
父親が入院した。
丁度イギリス旅行から帰ってきて、
一週間くらいした頃だったかな。
今現在は、
だいたい週に一度くらい僕ひとりだけが、
様子を見に行っている。
もちろん、
母も夫婦なので当然行くべしなのだけれど、
しかし、母も脚を中心に弱くなってきているので、
たまに僕が一緒に連れて行くだけの感じで、
基本は僕がひとりでササッと行っている。
そりゃまぁ当たり前だけど、
行くとちゃんと父の顔を見て、
洗濯した靴下などもって行って交換したり。
そういうことしたり。
もともとウチの父親という人は、
本当に難儀でグジグジと面倒くさくて子供っぽくて、
ひとりはしゃいだり逆ギレしたりでさらに、
言動にワケと意味の解らない処のある困った人で、
そういうのもあって、
僕が若い頃に、
「自立して外に部屋を借りて出たい」と思った、
その理由のうちの1つでもあった父なのだけど。
でもまぁね。こうなるとね。やはりね。
最近、昔の写真をよく観る機会があるのだけど、
「遊園地に連れてきてもらって嬉しそうにしている自分」
とか、そういうのも観ると、
「そらまぁ、やっとかんとあきませんやろ」
と、普通にちゃんと〝人として〟思うというかね。
他にこれをやる人は家族の中にはいないし。
もううまくしゃべれなくなっていたり、
普通には歩けなくなっていたりするけれど、
意識は比較的しっかりしているみたいで。
でももう、何だかんだ言って、89才だ。
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で、そうやって看に行っている中、
何か入院途中の手続きなどもあったりして。
まぁ、
行ったついでで出来るものはまだいいのだけれど、
一方、
たまの「イレギュラーなこと」などあったりすると、
予想外に突然、
手続き等に行かねばならなかったりすると、
結構手をとられる。
僕は〆切り基本の仕事だから、
場合によっては調整して融通を聴かせることも出来るけど、
逆に、
それと重なったりするとヤリクリがタイヘンだ。
前の前の前の前くらい台風の時、
(どれだけ来てるねん、台風!)
病院がハード的にトラブルになって、
一部の患者が一時的に系列病院に移動して一泊したことがあった。
で、次の日にはもとの病院に戻ったのだけれども
父は泊まったその日から下痢になったらしい。
僕は軽く笑ってしまったけど、
父は環境の変化に弱い、
つまりストレスに弱い。
すぐイライラとして精神が乱れる。
最近の研究からも気持ちと腸は密接らしいが、
正直に腸に来たんだろう。
さらに加えて、
そのあと、一週間以上僕は忙しくて行けなかった。
僕が行かないということは他に家族は誰も行かないことなので、
それで「誰も来なくて不安」になったのが腸に来た、
というのもあるかもしれない。
それが100パーセント正しいかどうかわからないし、
「違うと思うわ」と言う人もいるかもしれないが、
とにかく「あれからずっと下痢が治まらないので、
検査の為に系列の本院の方に数日臨時入院(転院)します」と連絡があった。
で、
まず転院した日に様子をみに行って、
次の日母をつれて行ってその日に手続きもして。
そして、
先日また連絡があって、
今度は、
担当医からのその後の状況の報告と、
退院(再びもとのところに転院)のことと予定のすりあわせをしに行ってきた。
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うん、
こういう話、
人によっては「なんか暗い話をしてますわ」
とかいいたそうな話題だけど、
(特に中年層で頭と中身が80年代から抜け出せてない人)
でも、
そういう人に限って、
本人中っかわが「どんより」してたりするんよなぁ。
こういうのは、
「したって暗いとかではないごく〝普通〟の話」だ。
それに、
実はね、
今日の本題はその父の入院のアレコレではなくて、
ここまではあくまで前置き。
長くなってしまったけれど。
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で、
その日は病院から、
「出来れば朝10時から来ていただけますか?」
ということになって。
丁度、
当日はイラストの〆切り日だったのだけれど、
前日までになんとか大丈夫になる状態にしておいて、
とにかく病院で長引いてそのあと食事する時間も含めて、
昼の2時くらいに戻るようなことを念頭に、
あらかじめ仕事を進めておいた。
でも、
実際行ってみると、
先生に緊急患者が入って20分ほど遅れただけで、
状況報告と今後の話と手続きは15分くらいで済んでしまって、
それから父の様子をみたり洗濯物を交換したりして、
10時40分くらいには手が空いた。
ので、
終わってすぐは、
「今ササッと帰ったらイラストの続きを進められるぞよしっ」
と思って直ちに戻ってしまおうとした。
でも、
ふと思い直した。
2時くらいに帰っても、
何も問題もない状態にしてるのだから、
ちょっとゆっくりして予定どおりにその時間に帰ろうと。
「いかんいかん、
〝余裕のないループ〟に入っている。
最近ほぼ何処にも行ってないし、
呑みにもいっていない。
ちょっと〝大好きなフラフラ散策〟をして、
食事もしてから帰ろうか」
と。
その病院は駅から徒歩で20分とちょいくらい。
ちょうど近くのバス停の前を通ると何人が待っていて、
すぐに来そうだったので、
再び「お、やはりバスに乗ってしまうか?」と
と瞬間思いかけたけど、
すぐに「いやいやいやいや」と思い直し駅まで歩くことにした。
天気も良好。
駅の近くで12時少し前から食事をするとしても、
1時間はある。
道を定めずにゆっくりとだいたい駅方向にブラブラと向かった。
●
そうしたら、
やはり何かに出会えるもので。
しばらくして脇道から鳥居が見えた。
ちょっと方向を変えてそちらに行く。
だいたい、
何処かを歩いていて、
神社をみつけると、
急いでいるとかとても疲れているとかでなければ、
大抵ひょっと入っていってお参りする。
「どれどれどんな神社かな?」
と思いながら鳥居をくぐって境内に入った。
すると、
本殿の前の左の「うん」の狛犬の脚首、
いやいや手首?
に赤い紐がくくってあった。
なんだかミサンガみたいでオシャレだな、
と思ったんだけれど、
何か意味があるのかなぁ。
何か決まった願掛けとか。
意味は分からないけど、
なんだかちょっとラッキーなものを見たようなキモチになった。
さらに歩いていると、
「餅関係専門の和菓子のお店」という表示の店があった。
ちょっとどんな店かと思って入ってみると、
煎餅や餅のチップスと共に、
抹茶系アイスキャンデーが売ってあった。
外は日差しでちょっと暑いし、
ペロペロしながら行くか、
と思って1つ買うことにした。
他にも何か買おうかな、
と思ってみていると、
エビチップスとゴボウチッブスの棚の下に向かって、
ゴキブリがサササッと移動中。
近くに店員さんがいたので、
どうしようかなと思ったけど
「あの…ゴキブリがいますよ」と。
すると、
「あ、そうですかすいません。そうなんですよいるんです」と。
「今、あの下に入りましたけど、シューッとかしなくていいんですか?」
と言ってみると、
「いや、ほら、試食とか置いているので、
シューッとかできないんですよぉ」と。
「そうですかぁ」なんて、
ゴキブリをネタにして、
ノンキな客とノンキな店員がノンビリしたやりとりをしてから、
僕はまた外へ。
●
抹茶アイスキャンデーを食べながら歩いていると、
ふと「閉まっている店舗」があって気になって脚を止めた。
感じから言って「車の販売店だったのかもしれないな」
と思って。
暫くすると、
また同じように同じ様な車の販売店だったっぽい、
空き店舗が再びあった。
「そうかー、車も昔ほどは売れないんだなー」
と今の時代を思いながらさらに歩いた。
しかし、帰って最初の店の写真を改めてみると、
ほんとに車の販売店かどうかは解らない。
どう思う?
まあ、何にせよ、
ほんとこの頃は「お店が閉まる」ということを、
よく見たり知らされたりする。
いろんなものが「昔ほどは売れなくなった」のは間違いないようだ。
●
なのに、
その後昼ご飯を食べてから帰る為に向かった駅の近くに、
新しくお店の沢山入る新しいビルが出来かけていた。
うーむ。
どうせ2年くらいしたら、
最初に入った店の半分くらいが採算とれずに入れ替わって、
さらに20年くらいしたら全体に寂しくなるかもなのは、
もう沢山の前例でわかっているのに、
それでも懲りずに、
建てる建てる。
そろそろ他に何か違う事をアイデアで考えられないものか?
同じ繰り返しはとても罪な気がしないでもない。
この頃よく思う。
だけど、
もちろん、
そこにいた作業員のみなさんと職人の皆さんには、
何の罪もない。
心の中で、
「作業中のみなさんだけ頑張れ頑張れー」と叫んで駅に向かった。
●
そんな感じに、
もし「病院から真っ直ぐに帰っていた」では、
味わえなかったアレコレを見て感じて、
のんびりリラックスした時間を持てて、
少し気分をリセット出来た。
何かに流されていると、
つい忘れがちになるが、
やはりこういうのは必要だ。
まぁ、
職種とか性格とか人によっては、
「すぐ帰って仕事せんとあかんやないですか、
そんなん何でもゴリゴリやったらええんですわ。
どんどんゴリゴリやったらええやないですかぁぁぁ」
という人もいるかもしれないが、
僕の場合は、
仕事的にも人間的にも生き物的にも、
こういうのは必要だなぁ。
こういうことで心を柔らかくしておくことが、
糧になって、スッキリとして、
直接的間接的に役にたって、
と、
改めて再確認した、
散策なのでした。
そして、
さらに逆から見ると、
「あの病院へ自ら行ったからこそ
手に入れたちょっとしたラッキーと小さな幸せ」
とも言えるかもしれない、
嫉妬されるくらいにそうかもかもしれない、
とも思ったりもしたのでした。
そんなこんなです。
That's all for now.
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