今回のロンドン話は、
ロンドンにあるビートルズがらみの場所を見てきた話です。
たぶん興味の無い人にはぜんぜんパッとしない話だと思うので、
「人には自分のことはどんな話も聞いてもらいたいけど、
人が話す興味ない話は別にどうでもいいのワタチ」
という勝手ちゃんなキモチの場合はすっ飛ばしてくださいね。
まず、
アビーロードです。
ビートルズの実質的に最後のアルバム『アビーロード』の、
4人が横断歩道を渡っているジャケットで有名な、
「アビーロード・スタジオ」近くのあの場所です。
3日目、
Msちゃんとタワーブリッジに行った後、
単独で向かいました。
最寄りの地下鉄駅は、
セント・ジョーンズウッド。
路線地図を見ながら問題なく到着です。
外に出ると、
周辺の地図を描いた小さな柱で確認します。
この周辺を明記した地図のついた小さな柱は、
ロンドンの街のアチコチに設置されていて、
単独行動の時にはほんとにこれに助けられました。
で、
地図を頼りに「アビーロード・スタジオ」方面へ向かいます。
駅からまっすぐ進んで最初の交差点に到着すると、
ほら、例の横断歩道があります。
向こうに見える白い建物が「アビーロード・スタジオ」です。
やっぱり人がワラワラといます。
意外と日本人はいない様でした。
そして、
渡ってます渡ってます。
(↑これはそもそも縦方向の「パノラマ」機能で写したもので、
そのせいでちょっと横移動の人たちの一部が途切れていたりします)
なんだかこの光景は、
なぜか見ていてちょっと恥ずかしかったです。
僕も、20代、せめて30代くらいまでなら、
ああやって大股で、
ジャケットのビートルズと同じ感じに渡ったりしたでしょうが、
「ちょっともう出来ないよなぁ」なんて思いながら、
アビーロードスタジオを眺めます。
ビートルズが数々のアルバムを録音したスタジオです。
「うん、ここで録音したんや」
なんてことをサラッと、でも深く思ったりしながら、
壁の落書きをちょっと軽くながめていきます。
テレビ番組などではここで盛り上げるために、
「さぁグッときなさいよ〜」なんて感じに、
ビートルズの曲がBGMに流れるのでしょうが、
現実はそんなことはなく街の音を背景に、
普通にテクテクと歩きます。
とにかく、まぁ、落書きだらけの壁です。
実際その場に立ってしまえば何てことはない、
そういうものかもしれません。
そして、最後に、この横断歩道を、
普通に静かに渡って駅に戻りました。
次に向かったのは、
かつてビートルズが自分たちで作った会社「アップル」の、
本社ビルです。
映画「レット・イット・ビー」の中でも多く登場して、
屋上で「ゲット・バック」や「ドント・レット・ミー・ダウン」などの有名なライブが行われたビルでもあります。
再び地下鉄に乗って「ボンド・ストリート」で降りて、
「サヴィル・ロウ」という地域に向かいます。
「サヴィル・ロウ」という地域は、
「背広」という日本語の語源の説の1つでもあるらしいです。
それは、ここ「サヴィル・ロウ」が、
背広服を売り出した発祥の地で、
「サヴィル・ロウ」がなそのまままって和訳して「背広」になった、
というものです。
調べると他にも諸説あるらしいけれど、
ちょっとそういう場所にあるというのも、
面白いです。
で、なんとか見つけました。
サヴィル・ロウ3番地。
真ん中の、1Fが白くその上が茶色いビルがそうです。
旧・アップル本社ビル。
ほぼ、そのまんまあるんですね。
今は他の会社のビルになっています。
そういうところがイギリスはエライと思います。
もう、それから45年くらいたっているのですよ。
日本の都市部にどれだけ45年前のものが残っているでしょうか?
(維持の手間は木造であれ煉瓦造りであれどのみちあります)
そもそも、このあたり一体は、どこもそのままみたいですし、
とにかく残して再利用なんですよね。
そうすると自然に意味あるものも残るってことでしょうね。
置いておけば置いておくほどに、
歴史的な価値(金銭的とは限らない)が上がるものっていうものが、
そしてそれによって多くの人のキモチを、
ちょっと持ち上げてくれる可能性のあるものが、
この世界にはホントたくさんあるんですが。
それが解っているのといないのと、
その差と結果が年月を経るほどに出てくるような気もします。
さておき、
↓正面から写したこの絵。
これは、映画「レット・イット・ビー」の中でも、
ジョン・レノンとヨーコ、そしてジョージ・ハリソンが、
この前に車をつけて社内に入るシーンで出てきます。
そのまんまです。
そして、この屋上で、
「ゲット・バック」や「ドント・レット・ミー・ダウン」を
演奏した訳です。
もし、興味があって時間があれば、
YouTubeなどですりあわせをしてみてください。
たとえば、ここ などで。
そして、
ぜんぜん誰も写真などを写したりしていないフツーの、
なんてことはないこの場所を後にして、
僕は帰ったのでした。
中学3年の終わり頃に、
初めて有名曲以外のビートルズの曲を知って、
高校時代にさらにビートルズに夢中になりました。
幸い、
高校で仲良くなった友人ミヤザキもビートルズ初心者で、
2人で競うようにビートルズのレコードを集めたりしました。
それは1976年〜79年くらいのことで、
もちろん、ビートルズはすでに解散していましたし、
他にもリアルタイムで魅力的なミュージシャンや音楽もありました。
いや、その頃の音楽は、
今に比べるとかなり贅沢な音楽状況です。
そちらも聞いたりして楽しんではいましたが、
とりあえず3年の間に夢中になるだけのものは、
もう存在しないビートルズにも充分にありました。
あの時代は今ほど情報はなく、
「ビートルズ・シネ・クラブ」というファンクラブに入り、
その会報で知ることと、
「ビートルズ復活祭」というイベントに行ったりして、
そこで見る映像、
そして、
一般に売られている雑誌のビートルズ特集などの記事に限られていました。
その中で見た写真や映像によって、
かなりアタマの中でいろんなイメージを作ったし、
一部の人が書いた断片的な記事から出来た物語によって、
思いを膨らまさせてもらいました。
それはたぶん、
ビートルズに限らず、何につけても、
そして、だいたいが誰でも、
そうだったのじゃないかと思います。
「本当とは少しかけ離れていても、
そうやって出来た物語を与えられて、
それを自分なりに楽しむのが楽しかった」
幸せな時代とも言えます。
その中で「冷めた現実的な態度」をとる人の場合でも、
結局はそれと背中合わせで同じことだったんだな、
と思います。
その後、
「受け身のゴールデン80年代」を過ごして、
「みんなでお客様なバブル期」も過ぎて、
「まだまだ解った気な2000年代」になっても、
そういう感じはあまり変わりなくきました。
ところが、
「ほんとのところはどうなの? な2010年代」に入ってきて、
いろんなところで、
「ほんとのところ」を求められ、
さらされるようになった気がします。
僕らの世代では、
相変わらず「アレはああで、これはこうでしょ」と、
今だに物語を思っている人がまだ沢山いる気がするけれど、
もちろんそれは一概に悪いと言えないとは思うけれど、
「で、ほんとはどうなの?」と思っている若者が、
そういう人たちにとって、
妙に冷めている(同世代の冷めているとは別ものの)ように、
見えてしまうのは仕方ありません。
そこで、「ほんとがどうあれ、従えよー」と言ったところで、
「ほんとう」のところに「動かされるもの」がないかぎり、
無理なんでしょう。
実際は存在しない「前の誰かに作られた物語」に、
ピンとこないのはもう仕方ないでしょう。
とういうことは、
「動かされるほんとう」とか、
「惹かれるほんとう」とかを実際に、
身をもって見せてあげればいいのですが、
それを持ち合わせていない人には、
まぁ、どうすることもできないわけです。
「わからんわー」ゆうて酒飲んで愚痴るのがせきの山です。
ん?
あれ〜?
話がちょっとそれてしまいました。
そこまで言うつもりは、なかったのにぃ〜い〜。
そうそう、
「誰かに作られた物語を楽しむ」から、
「ほんとうのところ」を求められるようになってきた、
というところでストップですね。
で、
最近そういうような考え方を持っている僕が、
アビーロードやアップルのビルの前に立って、
無邪気にはしゃぐことはもうなかったです。
淡々と、そこで何かがあった頃からそこにあるその場所を、
見てきました。
そして、そこは、ほんとうに、
なんてことはない場所でした。
ただ、
だからといって、
「だからガッカリした」とは全く思っていません。
むしろ、淡々としたその場所に、
昔そこでおこなわれたことに、
敬意を感じて帰ってきました。
もし、
もっと若い頃に行っていたらもっとはしゃいだりしていたでしょう。
そういう意味では、
その方が外から見れば幸せそうに映るかもしれません。
でも、
この年齢になった行ったからこそ、
得るものもきっとあるはずです。
しかも見てきたそれは、
イマドキにありがちな、
ネットの検索による「ほんとうを見た、つもり、でも実際は画像」ではなく、
正真正銘、
目の前にある実物なのです。
ここに意味がある気がしています。
それは、
もうある何かに関しては「おしまい」にしたような、
そして、たぶんそうした方がいいんだという確信みたいな、
そんな感じです。
それが、たとえばある種のそういう人たちとはもう、
相容れなくなったとしても、
それでいいんだ、みたいな。
その実際の場所において、
何か、大人として1つ終えてきたような、
「卒業」のスタンプを押してもらって帰ってきたような、
そんな気がしています。
なんだか漠然としてうまく言えていない気もしますが、
またちょっと大げさに感じられるかもしれませんが、
とにかく、
見てきてヨカッタと思っています。
そんなこんなです。