「まちがいさがしメイト」誌の仕事完了。
まずは、
「なごむ亭元楽」名義のペンギンイラストパズル。
そして、
チュンチュンの間違い探しも完了。
パズル誌のイラストを紹介した記事のときは、
そのタイトルや絵から何か言葉を拾って何か書く、
を今回も。
「ミキサー」<作り話>
彼女と暮らして2年半になる。
友人がやっているブックカフェに入り浸っているうちに、
そこへ土曜日の夕方に必ずやってくる彼女と知り合った。
つきあい始めて3ヶ月くらいしてから、
彼女は少ない荷物を持って僕の部屋に移ってきた。
彼女の荷物は衣装ケース4個分の洋服と幾つかの化粧品と、
僕の嫌いな村上春樹の単行本が詰まった段ボール箱と、
がっしりとしたミキサーが1つだった。
彼女はそのミキサーで毎日朝と夜にジュースを作った。
どんな日でも彼女はちゃんとジュースを作った。
いろんな野菜や果物を組み合わせて、
いろんなバリエーションのジュースを作り、
そして、僕は毎日それを飲んだ。
僕はいわゆる「フリーのライター」をしている。
そう言うと何だか格好はいいが、
もともと働いていた小さな代理店が倒産をして、
その会社が中堅の代理店から孫受けとして受注していた仕事を、
そのまま担当の僕が成り行きで引き受けて始めたにすぎない。
仕事の時間は不規則で生活もすぐに乱れがちになる。
おまけに、
フリーになってすぐに受注先の担当者が代わり、
彼とは馬が合わずストレスがたまり体調も不安定になり、
不規則な暮らしと合わさって一時期は気力を失っていた。
決まった仕事以外には何もする気が起きない時期が来て、
その頃に友達が部屋の近くでブックカフェをオーブンしたので、
時間があると店でぼんやりと過ごすようになった。
そしてそこで彼女と出会って、
一緒に暮らすことになり、
僕は毎日彼女の手作りのジュースを飲むようになった。
1年ぐらいで効果が現れた。
体調が少しづつ良くなったのだ。
体調が良くなると不思議なもので気力も少し上向きになってくる。
僕は馬の合わない担当者をなんとか上手にやり過ごしながらも、
テキパキと仕事をこなし空いた時間を彼女と楽しく過ごした。
2年目になるとますます体調は良くなり、
おまけに受注先の馬の合わない担当者が辞めて、
ちゃんと話しの通じる担当者に替わりストレスが無くなった。
そして、3年目の今、
少し仕事の幅を広げてみようと思い始めている。
今までの受注先の仕事以外の文筆の仕事も、
何かやってみたいなぁという意気が少し出始めている。
それがすぐに仕事に繋がるかは解らないが、
今、昔よく一緒に仕事をしたデザイナーに依頼をして、
自分のウェブサイトを作ってもらっている。
僕は彼女に聴いたことがある。
どうして僕と付き合う気になったのか?
なぜなら、あの頃の僕はかなりどんよりとしていた筈で、
何か魅力があったとは思えないからだ。
彼女は笑って、
「だって、死にそうな顔していて放っておけなかったんだもん」
と言った。
彼女は化学薬品の会社に勤めている。
文系の僕は聴いてもさっぱり解らないが、
毎日何かを分離して1つの物質を取り出しているんだという。
そして、
「会社で分離しているから、家では混ぜるの」
と言ってニコニコしながら今日も、
彼女はミキサーのスイッチを押す。
もうすぐ彼女が帰ってくる。
そんなこんなです。