ワタシの道具たち(その1)
シグノ (ブルーブラック)
これはシリーズにしたいと思います。
自分が使っている(使っていた)道具たち。
1回目は、やっぱりコレ。
ここ数年、
気に入って愛用しているペンがこの、
三菱・水性顔料インクボールペン「シグノ」。
そして、
色は「ブルーブラック」。
色がいいんですよ。
昔の万年筆の濃い青のインクの色のようで。
字を書いたら、なんだか雰囲気があって、
黒で描くよりも上手に見える(気がする)。
これで、もちろん字を書きます。
手帳とかメモとかハガキとか手紙とか。
そして、
絵も描きます。
簡単なラフスケッチとか下描きとか、
今では、イラストの仕事にも使ったりしています。
もともと、
色が気に入って、
手帳とか手紙用に買って使い始めて。
となると当然、日常的に、
イラストのアイデアのラフなスケッチに使ったり、
ぼんやり紙に描くらくがきとかにも使うワケです。
絵を描いてもこの「ブルーブラック」色は結構いいんです。
で、あるとき、
そうやって描いた絵を見ながら、
「このペンでこんな感じに気楽に描いた絵を‘なごむアトリエ’に載せよう」
と思いついて。
それまで、仕事のイラストでは、
ちゃんと鉛筆で下描きをして、
そのあとその上からプロ用の製図ペンで描いて仕上げる、
といういわゆる「ちゃんとしたやり方」でやってました。
そうするのが、仕事では当然でした。僕には。
だからこそ、
そうじゃなくて、
このペンを使った下描きなしでサラサラと気楽に描いた、
普段仕事ではぜったいにやらない方法と感じの絵を、
もっとアレコレ描いてどっかで見せたいなぁ、
と思って。
そして4年くらい前に「なごむアトリエ」でやり始めたのが、
「右手は動く絵をのこす」のコーナーでした。
その後しばらくは、
「イラストの仕事で描く絵とは違うもう1つの自分の絵」
という感じで個人的に描くのを勝手にタノシんでいた、
自分でもお気に入りのコーナーでした。
ところが、
あるコトでその考え方が変わってしまいました。
2005年の秋に、
サンデー毎日の編集者さんから連載エッセイの挿絵の依頼が来ます。
「えっ? あのサンデー毎日? いやいや、もしかして、サンデー毎田かもよ」
と思ってメールを確認したけれど、やっぱり「サンデー毎日」でした。
「サンデー毎白」でもなく「サンデー母日」でもなく、
ちゃんとした正真正銘「サンデー毎日」でした。
それは、
「なごむアトリエ」の「右手は動く絵をのこす」みたいな感じで、
イラストを描いて欲しい、ということでした。
「ということは、同じようにあのプルーのペンで描いて、
そのまま原稿にしてもオッケーということですか?」
と聴くと、
「ダイジョウブです。できるだけあんな感じになるようにしてください」
とのコト。
「仕事になるようなつもりでは描いていない絵」が、
仕事になっちゃいました。
「ああそうか、こんな感じの絵でもいいんだ。要は自分の絵なんだ」
と目からウロコでした。
いままで2000円くらいする製図ペンで描いていたのが、
100円のペンでもOKとなって、
なんだかユカイでした。
キミたちもバカにしたもんじゃないんだぞ、100円ペン。
そのサンデー毎日の蓬莱竜太さんのエッセイ「グドンの穴」のイラストは、
結局3ヶ月という短い期間で終わったけれど、
僕の絵に対する向かい方みたいなのを変えてくれたという意味で、
とても意味のある仕事でした。
あれから、
クロスワード誌のイラストの方でも多くは、
もとの原稿を「シグノ (ブルーブラック)」で描いたりしています。
過去の流れがあるのでそれをパソコンでモノクロにプリントして渡してますが、
製図ペンで描いたのとは違ったタッチと、
チカラの抜けた感じが出ます。
場合によっては、とても早く仕上がるし。
だから、
この「シグノ (ブルーブラック)」は、
今では僕にとって重要な、
「画材」でもあります。
このあいだ駅の文房具店で買い物をして、レジで精算してもらっていたら、
若い女のコが他の買い物と一緒に、この「シグノ (ブルーブラック)」を持って、隣のレジのカウンターに出しました。
「おっ、それ使ってるの? いいよねぇそれ。キミの何かを変えるかもよ」
なんてココロに思いながらお釣りをもらった、Jモールの地下1階「文具の三協堂」なのでした。
そんなこんなです。