これもまた、
何ともワケのわからない姉らしい、
ちょっと妙な後味の残る言葉。
●
今からもう8年くらい前かな、
毎週木曜夜の恒例で父母のところに帰った時に母が、
神戸大丸でやっている「歌川国芳展」に行きたいというので、
「行こう行こう」と話をしていると、
近くにいた姉が「私も行きたい…」とグニュッと言うので、
母の願いで3人で行くことにした。
で、
当日移動の途中のタクシーの中で、
黙って乗っている時に何の前ぶれもなく、
また、
それまで何かそういった話をしていたわけではないのに、
横で座っている姉が突然僕にこう言った。
「私が死んだら私の貯金をハジメにはあげたくないねん」
ちょっとその時に、
うすら笑いというか不気味な表情というか、
をしていた。
冗談で軽く言った感じではない。
●
は?
と思った。
いきなり言葉の返しようがない。
こんな風に、
姉はちょっと僕では思いつかないような、
まさかそんな時にそんなこと言うとは誰も思わないような、
さらに言葉の返しようのないことを言ったりする。
姉の顔は目が空中を見たような感じ。
たまによくある、
「どこかに行っちゃっている」ような表情。
●
だいたい、
僕は、
そんなこと思ったことなかった。
「姉の貯金が欲しくなる」とか、
僕の普段の日常の発想には全く無い。
それより「自分ことは自分で頑張らなくちゃ」という方が強い。
しかも、
姉が死んだ後に残ったお金のことなど、
普通に送っている日々の中では別に考えていないぞ。
なのに姉がそんなことを言うということは、
姉自身が「人や人のものをアテにしたい」という、
そんな気持ちを暇にもてあまして常に持っているからだと思う。
実際そうだ。
人をアテにしてばかりの人生だ。
なんか僕にはわからない、
あの姉の頭の中は理解できない。
しかもそれをニヤッとして僕に言うかなぁ。
「おかしい」し、
ちょっと気持ち悪い。
兄弟といえども。
●
そんでもって、さらに、
「あげたくない」なんだから。
僕などは、
例えば自分が死んでしまったら、
そのあと僕の物を残った者がどう扱うか、
そんなことを考えたことがない。
後のことはお任せする。
で、
残った物でもし家族が何かの役に立つならば、
それは使ってもらって構わない。
むしろ役立ててもらえばいいと思う。
逆に僕の持っているものなどの処分や手続きなどには、
手間をかけて申し訳ないかもなあ、
と思うくらいだ。
それを、
はっきりと、
「ハジメにはあげたくない」宣言
をいきなりされてしまった。
そんなことを本人に言うくらいに心の中では、
僕の存在は相当イヤなんだろう。
本音では心の中では。
子供の頃から「ひとりっ子に生まれたかった」人なのだから。
弟に平気で直接それを言い放つくらいの人なのだから。
そして子供の状態を今も自分で維持している人なのだから。
最近はよく、
「ハジメに感謝している」なんて表面的なことを言っているが、
まあ、心を開けば、
たぶん今もこんなだろうと思う。
だってこれはあまりに強烈で、
その強さがそんなに簡単に小さくなるとは思えない。
●
ほんとに別にいいよ、
それで。
そんなの人に貯金をアテにしてないし、
好きなようにしたらいい。
最終的に僕のところにこないようにしといたらいいやん。
逆にそんなことを言う姉の、
執着のこもったものをもらって使ったりしたら、
たたられそうで、コワイ。
●
それにしても、
前に書いた、
「お母さんが死んだらバラバラやぁ」にしてもそうだけれど、
(ごめんよ母)
よく平気で「死んだら」とかバンバン口にできるなぁ、
と思う。
いわゆる「忌み言葉」なんだけど。
しかも、
なんかよく無くない方向に使うよなあ。
自己中心でものすごく怨念が入っている感じに。
そういうこと言うと、
自分にドーンと戻ってくるんじゃないだろうか、
と少し心配したりもする。
●
さて、
さらに考えると、
そんなことを言えるということは、
きっと、
姉は、
貯金をたくさん持っている
ということなんだろうな、
つまりは、
とも思ったりする。
それで、
「私のこの沢山の貯金、私が死んだら、ハジメのものになるのかな。
それは絶対にイヤだな。あいつにはあげたくないな」と、
暇な時にもやもやと心配したりもするのだろう。
姉は普段はよく、
こちらは何も聞いていなのに。
「私貧乏でお金ないからお金ないからお金ないから」とか言ったりするが、
たぶん、だから、ということは、
結構あるのだろう。
僕や母が「お金のタイヘン話」をしていたりすると、
自分からいきなりそんなことを言い出したりするが、
言い方がちっとも「困っている」感じじゃない。
どちらかというと「期待されたくないからそう言っておかなきゃ」という感じの言い方だ。
●
実際、
「姉が貯金をたくさん持っている」
と推測するのは簡単で、
軽く計算すればすぐわかる。
少しいやらしいことではあるけれど、
いやらしい姉のことなのでここはあえて計算してみる。
●
姉はアルバイトをしている。もうそこそこ長い。
時給を仮に900円としても、
8時間勤務として1日7200円。
一ヶ月に働くのを少し少なめに20日としても144000円。
税金や保険や年金を差し引かれて月120000円とする。
姉は母に言われて家にお金を入れているらしいが、
その金額は別に母に聞かないけれども、
まぁ、入れていてケリのいい「3万円くらい」と思っている。
ケチで自分のことばかり心配する姉がそれ以上入れるわけがないと僕は思っている。
父が亡くなった直後くらいに「お姉ちゃん自立したら?」
と聞いたらものすごく怖い顔で、
「私はこの家にお金入れてるから!それが無くなったらこの家困るから!!」
と恩着せがましく言ったことがある。
それを母に言ったらはっきりとしたことは言わなかったけれど、
「そりゃ入れてくれててありがたいとは思うけど、
けどそこまで偉そうに言うほどは入れてへんやんか」
というようなちょっと不満そうな顔をした。
やっぱり3万くらいだな。
きっとビンゴだと思う。
就職して一年目のコが親に入れるのと同じくらい。
しかもその3万円は、
「食費」「光熱費」「日用品費」「家の維持費」などなど全部込みだ。
だから逆にその3万を、
月の「2食の食費」としたら(結構少な目と思うが)、
あとの「光熱費」「日用品費」「家の維持費」などなどは、
ただで暮らしていることになる。
働いていない家にいる未成年の子供と同じ感じ。
当然、「家賃」のようなものもいらない。
また、
「電子レンジが壊れたから新しいのを買わなくちゃ」とか、
「ここに新しい棚があったほうがいいんとちゃう?」とか、
そういう生活で臨時に必要となったものの出費も、
全て父母から出ている。
父母の家(今は母だけだが)だからという子供の頃からの意識だろう。
テレビも父が元気な頃はチャンネル争いをして揉めてたが、
それなら自分の部屋に買えばいいものを、
徹底して買わずに父母の買ったテレビを何としてでも観て、
とうとう父が亡くなって今は姉の独占テレビのようになってしまった。
食べるものも、
母が動けなくなった去年より前はずっと、
母が買ってきたり買ってきたいい食材で、
母がおいしいものを作ってそれを食べたり、
お弁当もそれらの美味しい晩ご飯の残りだったりとかした。
おまけに母が元気な頃は母に入れてもらっていたりした。
以上、
金銭も労働も全てやりくりしている主婦が聞いたら、
「なめとんかいっ!」ってなもんだろうと思う。
そんな感じで、
姉の生活のお金、
自分自身は工夫とかやりくりとかせずに結構いい暮らしをしていながら、
ぜーーーんぶ全てひっくるめて月に出ていくお金は30000円、
として、
120000円-30000円で、
姉の手元には月90000円残るとする。
●
じゃ、
あと、ありそうな出費。
女性だから「お洋服」?
母は昔、洋裁をしていて、
その後ブティックの店員をしていたくらいだから、
おシャレが好きで、高級ブランドでなくてもセンスのいい、
価格も質もそこそこいい洋服を沢山持っている。
で、姉はその服を着ている。
もう、どんどん着ている。昔から、今も。
これに関しては父が気に入らなくてよく怒っていたが、
しかし、
誰に何と言われようが、
「ワシのすることに文句つけんなーっ」ってチンピラな感じで、
ずっとそれを貫きゴリ押しを通してきた。
まぁたまにユニクロなどで買ってはいるみたいだが、
母がかつて買っていたような「ん万円」なものを、
買っている感じはない。
「買って失敗して損したらイヤ」みたいな気持ちが強い人だから、
まずそういうのは無い。
それから、
女性にはある「化粧品」?
姉は普段、
「ファンデーション」「マスカラ」「アイシャドウ」
「チーク」「口紅」「マニキュアやネイル」
みたいなものを一切していない。
その点、
母はつい最近までお化粧はしていて、
80才後半だった1年半くらい前までは「マニキュア」も塗っていて、
僕は「そういうのって、いつまでも女心を持っていていいなぁ」
と思ったりしていたが、
姉には無い。
近くにあんなにいい見本があったのに。
よく「私が片付けがヘタなのは、お母さんに似たせいや」とか、
都合のいいことだけ「母に似た」せいにしているが、
そこはぜんぜん似てないやんか。
それから、
「スキンケア」用品。
これまた、
母が購入している「いいスキンケア用品」をそのまま使っている。
少しくらいは自分で買っているかもしれないが、
結構値段がする母が常用している「オリーブオイル」などは、
バンバン自分のもののように使っているようだ。
それから、
趣味や交友関係。
母はよく昔からいろんな「スクール」みたいなものに行って、
趣味のようなものも持っていたが、
姉はそういうのはしていない。
聞いたことがない。
だからそういう出費もないだろう。
また、
そういうところで知り合った人たちと友達になって、
出かけたりということは母にはあったが、
姉には無い。
他にも友達と出かけて遊んできたりはほとんど無い。
ごくごく何年かに一度くらいとても優しい古い友人が1人誘ってくれるくらいだ。
ので。
そういった出費はないも等しいだろう。
●
で、
まぁ「おやつ」「雑貨」くらいは買っているかもしれないし、
「本」は買って積んでたりする(=読むじゃないにしても)みたいだから、
そこらは多く見積もって、
全部で20000円くらいの出費があるとしよう。
上の手元に残った月90000円から20000円引いて、
70000円、
これが毎月の貯金。
で、
サラサラッといくよ、
月70000円が一年で……。
そして、
今の会社には15年以上は行っていると思うので、
とりあえずその一年分に15かけて……、
わぉ。
すごい。
それにさらに、
それ以前にため込んだものも加えてあるだろう。
●
そりゃ、
そんなにあれば、
「自分のものは自分のもの、人のものも自分のもの」
な、
姉の性格ならば、
「死んでも人にはやりたくない」
とかだんだんと強く思うかもしれない。
●
もちろん自分が働いて自分が貯金したお金だ。
人がとやかく言う話でもないし、
一生懸命貯めればいい増やせばいいと思う。
姉の自由だ。
ただ、
それらは、
父母が老いていくまでそこにべたっとくっついて、
姉が嫌いで排除しようとしていた父が長年働いたために、
得ることができたお金によって暮らしを維持できたからこそ、
そして、
色々とやってくれて買ってきてくれて、
尚且つ姉を全て許してくれていた母がいてくれたからこそ、
増やせたお金だ。
しかし、
おそらくそんなことは考えたことなどないだろうな。
「ここの子供の私には当然で問題ないこと」なんだろう。
「えーやんか、ここの子供やねんから!ほっといてよ!」なんだろう。
そして、
僕は父の死去時に手続きや相続の関係でいろいろと見て知っているが、
今、
母の貯蓄は姉のに比べればほんとに少しだ。
時に臨時にそれを削りながらもなんとか年金でやっているという感じだ。
けど、
姉は相変わらずだ。
自分はどう考えても沢山持っていながらも、
今も母(もともとは父)がローンを返している家に住み、
父母が買ってきた家財道具を使って暮らし、
その家で必要な主たる出費は母の年金からまかない、
相変わらず母のそばで母の服をきて母のオリーブオイルを塗って暮らしている
●
さらに、
姉は、できたら先々は弟が、
今まで母がしてくれたように面倒みてくれたらいい、
と、どこかで期待している。
その弟に「感謝している」とか急に言い出して、
とたんにいい顔をし始めている。
「そんなことできないしおかしい」と言うと、
「私が嫌いなんや」とただ僕が「悪いヤツ」ということにする。
自分が「ただ可哀想」という風にそこだけ感情をもってきて言う。
そして、がーっとわめいたりする。
しかし、
感情的なことや「いい悪い」は置いておいても、
その弟の実際の事情というのは、
まぁこれは僕の力足らずもあるのだけれど、
収入が少ない。
デザインを手伝っていた会社との契約も3年前になくなり、
前からレギュラーであるイラストの仕事だけで何とかやっていて、
なんとかギリギリ、月によってはかなり苦しい感じになり、
そんな時には少しずつ貯金(姉よりははるかに少ない)を削りながら、
自分の好きな仕事を貫くために何とかやっている。
本来ならばいろいろと次への活動に挑戦するべきだし、
そのつもりにもしていたが、
(もちろんそれをしてすぐに収入が増えるかはわからないが)
母のところにサポートに行くようになって、
サポートしつつ前からのイラストの仕事をすれば、
時間的物理的にもう基本手一杯だ。
もうそこに手間のかかるやじっくりやりたい仕事は突っ込めない。
それでも、
当然「息抜き」や「作る人の欲求を満たす何か」は必要で、
それもそこに無理やり押し込めてやっている。
あとは何とか「どんなことでも楽しむ」持ち前の心意気で、
ギリギリやっている状態だ。
おまけに次々と姉が母に、
「ハジメにアレやってもらってコレやってもらって」とか、
「ハジメと一緒にアレしなさいコレしなさい」と母に言って、
用事を増やして、
「かんべんしてよ」という感じだ。
もちろん、
誤解のないように書くと、
母のサポートにいくことは、
「子としてするべきこと」と思っているし、
今、90過ぎた母との時間を過ごすのは大切な事と思っているから、
「やりたい」と思ってやっているし、
時として母といるのは楽しかったりもするので(昔から)、
そのためには何とかやりくりして凌いでいこうと思っている。
で、
そもそもアレコレ動くとお金はちょこちょこ出ていくものだし、
また母のところに行き始めた初期に、
母が色々とお金を出してくれていたら姉がクレームをつけたので、
交通費と母の昼食以外の、
オヤツなどのその他のァレコレは僕が出しているし、
残り150万くらいの貯金があとどのくらい持つかわからないけれど、
「大人」なのでやっていかないと仕方ない。
「いつかそれを見ている神様からの“いいこと”もあるだろう」
なんて思いつつ、(姉が聞いたら、
「それがほしいからやってるんや、へっ」とかいいそうだが)
母がかつてしてくれた「無償の愛」をお返ししたいと思っている。
そんな弟だ。
だから、
だいたいそもそも姉のことを、
どうこうしてあげるとか面倒みるとかなんて余裕などないし、
さらにそもそもそんな弟に期待して、
僕が姉のことをいろいろとしてあげないと姉が怒るみたいなのは、
「おかしい」。
●
しかもさらに、
今まで姉がて我が物顔して暮らしきたマンションは、
弟の僕が母のために負債人を引き受けて購入した家だ。
それはかつては父、今は母の年金から返しているが、
それを今まで、そして今も「知らんぷり」なのに、
どうしたら、
「弟によくしてもらいたい」なんてそんなことが、
ゴリ押し的に思えるのか。
それどころかそのマンションの事に関して言おうとすると、
姉は「そんなこと言うなんて気に入らない!」みたいにするのも、
やはり「おかしい」。
でもって、
姉は自分は貯金がたんまりだ。
あのマンションの負債などすぐに全額返せるくらいの金額だ。
しかし、
それを「私が死んでもハジメにあげたくない」で、
さらに、
「私が困ってたら助けてくれるんやったら、
私もハジメを助けてあげるけど、
私を助けてくれへんねんやったら私も助けへん」
だ。
でもって、
「お金ないねーん貧乏やねーん」
とか適当なことを言っている。
ということは、
母の残り少ないお金までもアテにしていても、
おかしくはない。
で、
弟のもっている家の責任とか生活の現実には「知らんぷり」なのに、
いままで母がしてくれてた通りの暮らしだけは、
弟がしてくれることをアテにしていて、
表面的にだけ「感謝してるねん」とか言いはじめて。
へぇぇ、
アンタ、
すごいなぁ。
ほんとに。
えげつない。
●
けれども、
もういまさら、
どうこう口で言って、
姉を諭す気にもなれないと、諭されたりもしないだろう。
また、あんな感じの姉には、
言っても無理と思わないと仕方ない、ここまできたら。
100人中60人が、
「そんなんあかんやん、ちゃんと自分で生きないと」
「誰かダーリンつくってその人にやってもらったらいいのに」
とか思って、さらに、
「そうした方がいいんじゃないか、じゃないと付き合いきれないよ」
と多くの人が思う「人」として普遍的なことをいくら僕が言っても、
「ハジメは私が嫌いなんや」
とそういう形にすり替えて言われちゃって、
ただこちらが悪くされるばかりで疲れるばかりだ。
●
けれども、
やはりこうも思う。
そんな、
ずっと長い間、
家族を食いモノにして自分だけラクして太る
みたいなことをしてたら、
やっばり、
どう考えても、
バチあたるよ。
と。
●
とにかく
あの日、突然、
姉が直接僕に言った、
「私が死んだら私の貯金をハジメにはあげたくないねん」
は、
姉の言った「イヤーなすごい言葉」の
ベストスリーには入る。
(前に書いた「お母さんが〜だらバラバラやぁ」も入るな)
もし、
日本貯金協会(あるのか?)が主催する、
「貯金のことでとてつもなくヘンでイヤなことを平気で言う大賞」があったら、
文句なくグランプリをあげて、
「商品・高級スキンケア用オリーブオイル1年分」をあげてもいいくらいだ。
よかったやん。
まぁほんとにそれにしても、
どう思う?
そんなこんなです。
That's all for now.
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