もう約20年くらい前の話。
当時「スタジオハルツ」と言うチーム名で、
パソコン作品作りを一緒にしていた友人ハルナは、
もともとは、
僕が大阪で働いていた時に仕事で知り合い、
個人的にも次第に仲良くなっていったのだけれど、
彼はその頃からすでに東京に住んでいた。
けれど、
ハルナの実家は神戸の鈴蘭台にあったので、
彼がこちらに帰ってくる時には、
大抵会ったりするようにもなっていた。
そのうちに彼は結婚して、
ある時、
嫁さんのCちゃんも一緒に帰省した折りの夜に、
神戸の三宮で三人で食事をしてから、
もう少しどこかで飲もうと、
飲み屋を探して繁華街の「東門街」を歩いていた。
通りを北へ歩いて途中の左手にあった、
筆で描いたお地蔵さんの顔の看板が目に止まった。
僕はその絵が何だか気になったので立ち止ると、
Cちゃんもそれをじっと観て立ち止まっていた。
笑って「じゃあここにしよう」とかなんとか言って、
入ったお店が「なんじゃ」という、
ママさんがやっている良い感じのバーだった。
その時に気に入ったので、
その後数回、
ハルナが帰省して夜に三宮で会った時に、
一緒に「なんじゃ」を訪れた。
そのうちの1回のこと。
その頃、僕とハルナは、
本当は本人は全く興味は無いのに、
Cちゃんを勝手に「カエルグッズコレクター」ということにして、
何かカエルグッズを見つけると、
頼まれてもいないのに買ってあげたり、
「ハルナ、こんなカエルを見つけたのでCちゃんに渡して」
なんてことをして遊んでいた。
グッズを渡して、
「えーーーっ、別にほしくないー」
と言うのを、
「いやいや、そんな遠慮しなくてもいいから」
なんて言って、
みんなで笑ったりしていた。
で、
その日はハルナだけだったので、
二人で三宮をウロウロしている時に、
ふと見つけてしまったカエルのマスコットを、
「これいいなー、僕買うのでCちゃんにプレゼントして」
「あははは、きっと喜ぶわー」
なんて言いながら、
そのカエルのマスコットを買って渡した。
そして、
食事の後、
二人してそのバー「なんじゃ」に行って、
カウンターの隅で飲んでいた。
するとしばらくして、
その日がママさんの誕生日当日だったか、
もしくは、
お店での「ママお誕生日パーティー」の日だったか、
そういう日だということが解った。
でもたしか、
その日はハルナが早く帰らないといけないとか、
そんなんじゃなかったかなー。
少しだけ飲んでお勘定をしてもらうようお願いした。
たまたまとは言え、
そういう記念の日に来ておいて、
それに付き合わずにサッサと帰るのが申し訳なくて、
ハルナと相談して、
Cちゃんに買ったカエルの吸盤付きマスコットを、
店を出る間際にドアのガラスにペタッと貼って、
ママさんへのプレゼントということにして帰った。
その後、
ハルナが帰省する回数も減ったり、
発売元の関係で「スタジオハルツ」の活動も終わったり、
その影響で収入が減ってタイヘンな時期になったり、
いろんな理由もあって、
ハルナと「なんじゃ」を訪れることも無くなった。
けれども、
ママさんと年賀状のやりとりは続いていたことから、
数年後に、
「店の場所が変わって、カフェもやります」という
案内のハガキを貰ったのをきっかけに、
2004年か2005年だったかに久々にお店を訪れた。
そして、
収入的にタイヘンだった時期が収まったこともあって、
その後今度は一人で、
また行くようになった。
●
去年の1月にママさんは、
「なんじゃ」を閉めた。
毎年、
7月にはママさんのお誕生日を祝うパーティーが、
12月にお店を始めた周年を祝うパーティーが、
あるのだけれど、
閉店の丁度ひと月半ほど前にも、
お店の「周年パーティー」があった。
24周年で最後の「周年パーティー」だった。
僕は参加しなかったけれど、
カードをママさんに宛てて送った。
それは、
20年ほど前の、
カエルのマスコットをあげたことをモチーフに、
絵にした手作りのカードだった。
もちろん、
そのマスコットは、
ハルナと一緒にお店で見つけて買った時と、
その後ママさんにあげるためにドアにくっつけた時にしか、
目にしていない。
だから、
「まぁ、だいたいこんなんじゃなかったかなぁぁぁ」
なんておぼろげながらの記憶で、
あとは適当に想像半分に描いたものだった。
●
さて、
先週の土曜日に、
そのママさんから、
Facebookでメッセージが来て、
そこに、
「この子と会うのめっちゃ久しぶりでしょ」
というメッセージと共に、
写真がつけてあった。
あの、
僕たちがプレゼントした、
カエルのマスコットだ。
これ。
カワイイじゃないか。
でも、笑った。
僕の描いた絵よりもかなり、
短足だ。
そうかー、
こんな姿だったのかー、
絵とは違うなー、
と。
僕の絵のカエルは全体にスマートで、
それはそれでいいけど、
しかし、
これはこれで、
なんだかとってもイイ。
あの日から、
約20年ぶりに観たカエルは、
想像と少し違ったが、
それでもナカナカの〝本当の〟あのカエルだった。
〝イメージ〟ではなく、
〝本当の〟ということは結構タイセツだな。
これからは特に。
〝時間〟は、
おもしろい。
そんなこんなです。
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