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9月から読んでいた『暮らしを支える植物の事典』を、
11月の初め頃に読み終えた。
前にも書いたけれど、
大阪で働いていたときに会社が一緒で、
今は東京に住んでいる友人のMっちゃんの、
そのお父さん(農学者をされていた)が翻訳と出版に尽力した本だ。
10年前に亡くなられたあと、
暫くしてからMっちゃんが、
「父の本が最近完成したのでよければ」と、
いただいたもの。
(逝去後に他の方が引き継いで出版に働いたとのこと)
それから数年、
読もう読もうと思いながら、
ずっと本棚に置いたままだったのだけれど、
この秋からふと読んでみる気になった。
ボリュームもあり読むのも少しずつだったので、
全て読み終わるのに時間もかかったが、
読み応えがあった。
それにかなり、
為になった。
普段意識していないけれど、
どれだけ多くの「植物によって出来ているモノ」に囲まれているのかが、
よく分かったし、
いわゆる見た目の木製や自然素材的なものだけでなく、
「えっ?」と思うようなものまで、
原料が植物由来で出来ていたりするということを、
初めてちゃんとした形で知らされた気がする。
「こんな風にまとめて、
こういうことを教えてもらえるようなものは、
あまり無いよなぁ」なんて思ったので、
この本は処分などはせずに、
「保存版」にすることにした。
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この『植物の事典』では当然、
まず、
「植物の力は素晴らしい」ということを、
衣食住に使われているいろいろな植物を例にとって、
その力や作用や効用を教えてくれている。
(もちろん上にも書いたように、
パッと見ただけでは植物由来とわからないものも含めて)
ほんとに読んで、
「すばらしいなぁ〜植物は〜」
なんて思った。
けれど、
ただそういう植物賛美だけでなく、
さらにこの本では、
現在の植物にまつわる産業の、
危うさや問題点も同時に教えてくれてる。
例えば、
それらは、
先進国の僕らの手元で簡単に手に入って、
しかも、
それをあまり意識せずに暮らしているのだが、
その気づかないというコトが、
どれだけ多くの植物を大量に消費してしまっているか、
ということの危険性を訴えている。
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それらの原材料となる植物は、
もちろん、
ちゃんとした労働やちゃんとしたルートや、
ちゃんとした法の下で管理・加工製造・輸出されて、
先進国の僕らのもとに入ってくるものもある。
けれど、
安く大量に売られて手に入りやすいものの中には、
見えないところで、
人々が過酷な労働で搾取されてものも多いという。
また、それらを得るために、
古くからそこに住む原住民を否応なしに追い出していることもあるという。
僕らが「ひゃー安いねー、ラッキー。飽きたら捨てようポイッ」
なんてやっている裏で、もしかしたら辛い仕打ちを受けている人が大勢いるかもしれない。
逆に高価なものに関しては、
高く取引されるがゆえに売買したい人も多く、
太古からの森林がどんどんと伐採され、
中には勝手に違法に伐採されるケースも多くあり、
しかもそれがどこで取れたものか、
原材料になってしまうと特定できない場合も多く、
知らない間に「反則モノ」を使っている場合もあるらしい。
それは、普通にぼんやりと過ごしていると、
ちょっともう解らない。
けど、
考えたら、
こんなに多くの国がどんどん経済発展してるんだから、
「そういう感じはどんどん進んでいるかもなー」
っていうのは、
こんなポヨポヨ〜ンな僕でもこの本を読んでいるうちに、
想像出来てしまったりする。
そうやってどこかで、
どんどんと木や森が無くなっているのに、
そのあたりのことを聴かれると、
「まぁ、大丈夫なんとちゃいますのーん?」
「深く考えても仕方ないやないですか〜」
とノンキにやっているのがほとんどの現状なのかもしれない。
と、
そんなことを思った。
それから、
ちょっと前なら、
高級な木材で出来た家具を購入して、
「いやぁ、やっぱり天然の木で出来たモノはいいねぇ〜」
なんて言っているのが、
「よく知っているインテリ」なんて感じがあったけれど、
これからはもうそれだけで喜んでいると、
単なる「お気楽バカ」になるのかもしれない。
高級素材のものを買うならば、
ちゃんとしたルートでとれたちゃんとしたものを、
出来るだけ見極めて買うようにするのが、
この先は「ちゃんと考えられる人」になるのかもしれないナ。
そんなことも思ったりした。
もちろん、
だからと言って、
個人でどうこう出来る事はなかなか多くは無いけれど、
少なくとも、
こういう話に対して、
「まぁ、そんなコトゆうてもいろいろあって難しいんちゃいますか〜」
っていうような口先だけの鼻声的物言いだけは、
これからは出来るだけやめておこう。
だってバカみたいだもん。
❖
とにかく、
この『植物の事典』は読んでよかった。
もっとみんなに読まれるぺきだなぁと思う。
ただ、残念なのは、
この訳本のもとになっている、
イギリスの植物研究者アンナ-レウィントンさんの本が2003年版のもの、
それからこの訳本自体は2007年のものというところ。
たぶん数字的なものは現在は違うと思うし、
いろんな事情も変わってきていて、
それ以降に特筆すべきことも出ているだろうから、
改訂版があればいいのになぁ、
とおもったりする。
また、
文章自体は難しくはないのだけれど、
研究書的なものだからか、
値段がちょっと高い。
そのあたりでなかなかみんなの手に、
という訳にもいかないかもしれない。
でも、
ほんとに個人的に、
「みんな知るべきだ」と思うようなことが沢山かいてある本で、
いいなぁと思う本だった。
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そんなこんなです。
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