「LINE」がしばしばニュースになったり問題になったりする。
「LINE」の「トーク」は、
要するにネットを使った「チャット」機能で、
「チャット」というのはもともとパソコンのネットワークで始まった、
リアルタイムの文字による会話の機能だ。
ちょっと思い出してみる。
僕が初めて「チャット」をしたのは、
もう20年以上前だった。
当時は僕は大阪で働いていて、
その会社の仕事を通じて、
のちに一緒にCD-ROMの作品を一緒に作る"ハルナ"と知り合った。
彼は当時、
コンピューターのシステム制作の会社に働いていて、
僕のいた会社の担当だった。
そして、イベントなどに使うシステムの画面デザインをウチの会社に依頼していて、その仕事の画面デザインを僕がやっていた。
彼のいたその会社は大阪に本部があり、
それ故に僕のいた会社とのつながりが古くからあったのだけれど、
東京にも「東京本部」があり彼はそちらの勤務で、
彼が大阪で研修をしていた時代に僕のいた会社に実習に来た関係で、
その後も僕の会社の担当となった。
何回か仕事をして、
彼が関西に帰省してくる時にも会ったりして(彼は神戸の北区の出身だった)、
次第に仕事を越えても仲良くなった。
それに、僕も彼も当時は若かった。いろんな事に柔軟だった。
あるとき(1990年くらいじゃないかと思う)、
彼が電話で「ゲンちゃん、チャットしようよ」と言った。
僕はパソコンを使って絵を作ったり画面を作ったりしはじめていたが、
コンピューターの事は基本的にはまだまだ解らず、
「へっ? 何それ?」
ってな感じだった。
しばらくして、会社に郵便でフロッピーディスクが送られてきた。
チャットをする為の専用のソフトだ。
5インチのフロッピーだったと思う。
モデムはどうしたんだろう?
思い出してみたけれどよく分からない。
誰かが面白がって会社の経費で買ったものが埋もれていたのを使ったのか、
それともハルナが送ってくれたのか。
どうも、前者だったような気がするのだけれど定かではない。
とにかくモデムを、
普段は社長が経理に使っているPC-98というパソコンに繋いで、
FAXの専用回線を使ったのかなぁぁ、どうだったのか忘れたけれど、
(もちろん当時はパソコンのネット用の専用の回線などは無い)
回線を繋げてハルナの送ってくれたチャットのソフトを立ちあげて、
電話でやりとりしながら彼の言う通りに進めた。
たぶん、電話で彼が、
「じゃ、ゲンちゃん、打つよぉ」と言ったのだろう。
次の瞬間、ソフトの画面に、
「こんにちは、ゲンちゃん」(だったかどうか正しくは忘れたけれど)
という、電話回線を通ってきた、
彼が遠く東京の会社のパソコンから打った文字が、
僕の前のパソコンに出た。
東京でハルナがたった今打った文字が今、目の前の画面に出てきたのだ。
こういう未知なことをすると不思議なもので、
最初の瞬間に「おおーっ」と感動したあとは、
何故か、無性に「可笑しく」なるもので、
僕はその文字を眺めてしばらく笑っていた。
面白くて、可笑しくて可笑しくてしかたがなかった。
そういえば、もっともっと後の話しになるけれど、
パソコンで「Skype」を使って初めてテレビ電話をしたときも、
初めての日は可笑しくて可笑しくてずっと笑っていたものだ。
そうやって、チャットでハルナが打ってきた文字にひとしきり笑うと、
今度は僕の番だった。
何て打ったのだろう?
もちろんその細かいところは忘れた。
仮に、そうやなぁ、当時の僕なら、
「はーい、ハルぽん」とでも打ったのだろう。
すると、きっと彼がすぐまた「ハルぽんですよー」とでも、
打ち返してきただろう。
その文字が、今にして思えばそっけない画面の中を、
文字がタタタタタタッと言う感じに、
左から右に出てきて、
それを繰り返してやりとりする。
もうそれだけで、僕は笑った。
いや、
これらの描写はとにかくあの感じを書こうとして、
わかって貰おうと思い書いているのだけれど、
正しく言うと、
「ただただ面白くて可笑しくて、しかたがかなった」
とだけしか覚えていない。
とにかく、
初めてのチャットは楽しくて可笑しくてもう仕方がなかった、
そういう、印象が今でも残っている。
今は、
「チャットは楽しいなー」と単純に思うようなことは、
もう無くなった。
「LINE」は友人ヨシナガとだけはやっているが、
それを他にももっと広げようとは基本的には思っていない。
なぜなら、「善し悪しがあるなー」とほんとに感じるからだ。
そして思うのは、
チャットは確かに「新しいもので今までになかった画期的なもの」
としてあの時笑い転げるほどに面白かったけれど、
おそらく、僕があんなに笑ったのは、
そして、あんなに楽しかった根っこは、
「仲の良い友達と一緒になって面白いことをしている」
からでは無かったか?
ということだ。
それなら、
たぶん「LINE」でなくったって何だっていいんだ、
本当は。
最先端や流行りのものでなくてもいいんだ、
きっと根本的には。
と、
今では、そう思ったりしている。
そんなこんなです。