僕がまだ少年の頃、
書店に行くと、
クルクルと回転する専用のスタンドに入れられて、
「ピーナツ・ブックス」が売っていた。
スヌーピーやチャーリーブラウンの出てくる、
チャールズ・M・シュルツさんの書いた、
あのシリーズの漫画だ。
中学生の時代に、
当時そのピーナッツ・ブックスを好きで何冊か買った。
(正確には最初の一冊目を買ったのは小学生の時かも知れないが)
日本語訳は詩人の谷川俊太郎さん。
今でもその時買った10冊ほどは持っていて、
(これはいつだって絶対に処分できない)
この間、トランクルームからそのうち4冊を取り出してきた。
ツル・コミックス社が出していたこの頃のものは、
ブックデザインがポップでシンプルでいい。
同じクラスだった「シノハラ」もこのピーナッツブックスが好きで、
お互い持っている何冊かを、
交換して貸しあいっこしたりしたのを覚えている。
少し読んでみた。
自分でどんどんネガティブに入り込んでいくのに、
時としてヘンに浮かれてそれがまた裏目になるチャーリー。
毛布があれば安心で冷静で頭が良く、
なのに「カボチャ大王」は必ずいると信じているライナス。
ある意味で「女性」というものを極端に現したような、
強気で沸点が低く、と思えば超現実的でありながら、
大好きな芸術家肌のシュレーダーにだけは弱いルーシー。
全ての人と物事に対して常にフラットで、全ての人に紳士で、
自由と誇りと博識と妄想を愛するスヌーピー。
他にもいろんな登場人物。
少年の頃に読むのとは違った、
かなり深い読み方が出来る漫画だったりする。
読んだ当時からこの漫画で印象的な、
良く出てくるフレーズが二つある。
1つは、
特にチャーリーがよくこの、
「 タメイキ 」を出していた。
(他の登場人物の場合も見つけたが)
今のものはどうか知らないけれど、
このツル・コミックス社版では、
漫画の横にオリジナルの英語の文章もつけあって、
この「 タメイキ 」のところには、
※ Sigh ※
とあった。
「そうかぁ、タメイキはSighなのかー」と、
中学生の僕は思ったりした。
もうひとつ頭に残ったフレーズは、
コレ。
これもチャーリーが多いのかな?
「ヤレヤレ!」。
普段、なかなか「ヤレヤレ」なんて言わない。
言いそうで言わない。
でも、「ヤレヤレ」は「ヤレヤレ」だ。
口にしなくても頭の中ではしょっちゅう「ヤレヤレ」だ。
横に書いている英語では、
Good grief!
となっている。
このピーナツ・ブックスに頻繁に出てくる「ヤレヤレ!」は、
僕にはなんだか印象的だったなぁ。
このピーナツ・ブックス以外にも、
僕が知っているもう1つ頻繁な「やれやれ」がある。
熱心な読者の間では有名らしいが、
初期の村上春樹さんの小説に何かといえば、
「やれやれ」という表現が出てくるのだ。
主人公の「僕」が、
いたたまれないような状況やあきれるような状況に立たされた時、
よく「やれやれ。」と思う。
つまり今、僕の中では、
「ピーナッツ・ブックス」と「初期の村上春樹小説」が、
二大「ヤレヤレ(やれやれ)」であったりする。
それにしても、
ピーナツ・ブックスの奥付の出版年を見ると、
1972年だったり、1974年だったり、1975年だったり。
え…? うう…、40年だって?…、
ヤレヤレ!
そんなこんなです。