実は少しおどろいた。
たぶん彼女は挨拶には、
来ないだろうなぁとふんでいたので。
「これお祝い」と、
フランフランの包みを僕に渡した後で、
彼女は、
「結婚式に来てるかなぁと思って見ててん」と、
首をあげて遠くを眺めるフリをしながら、
そのコは言った。
でも、呼ばれてもいないのに、
普通は行かないよ。
僕はストーカーじゃないし、
そういう意味ではそんなコトをする理由もない。
そんなん言ったらあかんやんか、
もう。
そこは切り返すで。ごめんや。
なんかせつないけど、ごめんな。
と心でそう思いながら、
シラッとした顔で、
「え? そんなん、日にち知らんやんか」
と答えると彼女は、
「いやっ、大家さんに聴いてっ」 と、
あわてたように言った。
実際、僕は本当に、
彼女の結婚式の日にちは知らなかった。
彼女とは初夏のころに外で出くわして、
少し会話をして以来、話をしていない。
お盆にも見かけたけど「ひさしぶりっ」 と言った程度だ。
そして、
それからその日までの間、
大家さんに彼女の結婚の日取りを僕から聴いたこともない。
何かの話の中で教えてくれたのは、
「今度彼女結婚して出て行くのよ」程度のことだ。
ほんとうに。
だから、
この日の会話は、
そういう意味でも、
どう考えてもオカシくてミョーなんだ。
そして、
その玄関先で会話をしていた間の終止、
僕がずっと何気なくチェックしていたのは彼女よりも、
そのヨコにいた彼女のカレだという男性の方だ。
こんなにミョーな会話をしているのに、
カレはずっとニヤニヤとして立っていた。
おかしかないか?
この、僕と彼女の会話。
ねぇ、ニイちゃん。おかしいだろ?
そう思いながら僕はまたニコッとカレを見てみた。
「ああ、こいつが一番ミョーだなぁ」
そう思いながら彼女と話を続けた。
その日そのコは、
普通の感じのピンクのトレーナーを着ていた。
#2