あるところに、
うさぎとカメがいました。
ある日、
ウサギがカメに言いました。
ウサギ「おい、カメ。あの向こうの山のてっぺんまで、僕と競争しないか?」
カ メ「いやだよ」
ウサギ「あ、自信がないんだなー、やーい弱虫」
カ メ「……」
ウサギ「…なんだよ」
カ メ「……」
ウサギ「…な、なんだよ!」
カ メ「…あのさ、わかるやろ? 僕がキミより足が遅いのは。わかりきってるコトやんか」
ウサギ「…そ、そ、そんなのやってみないと…」
カ メ「なんでやねん。わかってるやんか。ウサギもわかってるんやろ?」
ウサギ「…」
カ メ「そしたらな、そんな僕がキミに勝とうと思ったら、例えば、キミが途中で"楽勝やー"なんて安心して、居眠りとかしてさ、それを僕がだまって追い抜いて、ゴールする、とかな」
ウサギ「…」
カ メ「そんなことでも無い限り、勝たれへんワケやん」
ウサギ「…」
カ メ「けど、僕としてはな、そういうコトもしたくないんや。やっぱり寝ている人がいたら、"競争中だよ寝てたらダメだよー"なんてちゃんと起こしてあげたくなるワケや」
ウサギ「…」
カ メ「そしたら、僕はやっぱり負けるやん。そんなん、やっても意味ないやん」
ウサギ「…」
カ メ「それにキミも、最初っから勝てると解っている弱い者に競争を挑んでいて、それでいいんか?」
ウサギ「…」
カ メ「もっとさ、チーターとか、ダチョウとか、レベルの高いところにチャレンジしていった方がいいんとちゃうの?」
ウサギ「…」
カ メ「僕に勝ってみたところで、ちっとも自慢にならへんと思うで」
ウサギ「…、はい」
カ メ「いつまでもそんなんでヨロコンどったらあかんのちゃう?」
ウサギ「…、はい」
カ メ「もっと大人にならんと、ほんまに」
ウサギ「すいません」
カ メ「いや、わかったんやったらええねん」
ウサギ「はい」
カ メ「ところでさ」
ウサギ「はい?」
カ メ「どちらが遠くまで泳げるかやってみいへん?」
そんなこんなです。