ここからちょっと行ったところに、
地域の自治会館みたいなところがある。
こぢんまりしているがキレイな建物で、
選挙の投票所だったり区の定期検診を行っていたり、
夏には敷地でチビッコの盆踊りなんかもしている。
そのキレイな建物になる前は、
古い木造の低い横長の建物があり、
その前にはもともとは運動場だったと思える小さな敷地があった。
昔はたぶんそのまま「幼稚園か保育所」だったのだろう。
そんな感じのところだった。
そこがまだそんな感じだったころ、
そして、まだ神戸に大きな地震が来るまだ少し前。
おそらく1993年のことだったんじゃないかと思う。
当時僕は、働いていた大阪の会社を辞めて、
フリーになってまだ1年ぐらいの頃だった。
「平日昼間っからフラフラしているアヤシイ若者」になった僕は、
食事をしに駅前に行く為だったのかその前を歩いていた。
すると、何かの撮影隊スタッフのような集団が、
その敷地内で動き回っているのが見えた。
「何の撮影なんだろう?」と思いながら通り過ぎた。
次の日にその場所の四つ角の斜め前にあった喫茶店へ食事に入ったとき、
お店のおばちゃんが常連客らしい男性に、
「昨日、前で映画の撮影しとったで。鶴瓶も来とったで」と話しているのが聞こえた。
「へぇ、どんな映画なんだろう?」と、
その後、気になっていた。
しばらくして、
「ぴあ」か何かの雑誌で、ある映画の紹介が目にとまった。
「神戸の各地で撮影」、そして出演の中に笑福亭鶴瓶の名が。
「ああ、これだったんだな」と解った。
「夏の庭 The Friends」という映画だった。
その「夏の庭」を実際に観たのは、
震災の前だったのかちょっと後だったのか、
とにかくレンタルビデオ店で見かけて、
「あっ、これ」と思い出して借りて観てみた。
ほんのちょっとだったと思うけれど、
その、昔の自治会館に使われていた木造の建物の敷地の中が映っていた。
そして、その斜め前にあった喫茶店も(今はもう閉まっている)、
ちゃんと向こうに小さく映っていたように覚えている。
自治会館が今のキレイな建物になったのは、
僕がその映画を観た、もっと後だったように思う。
去年の秋、フシギな縁あって、
その映画の原作である、
湯本香樹実さんの小説「夏の庭 The Friends」を読んだ。
そして、今年に入って、
無性に映画の「夏の庭」が観たくなった。
あの、今はもう無い木造の建物がみたい。
(どの程度映っていたのかという再確認も含めて)
そして、映画全部を通して、
後ろに映っている町並みをじっくりと観てみたい。
というのも、
あの映画を観た時からだいたい12〜3年くらい。
その間に僕は、この辺りをはじめ、
神戸のアチコチをさらにうろうろと散策して見てきているので、
今なら、「あっ、これはあそこで映したんだな」
というのがきっともっと解る。
そして、それらは、
全て震災前の姿なのだ。
「今は便利だから、ネットで検索すれば、DVDですぐに見つかるだろう」
とそう思った。
でも、甘かった。
どうやら、「夏の庭」はDVDになっていない。
ちっとも便利じゃない。
VHSビデオならば中古でネットで手に入るのが解った。
でも、VHSビデオプレーヤーはもう持っていない。
なんて不便なヨノナカなんだ。
でさらに、
「今後近いところで、テレビで放映したりしないか?」と思った。
今は便利だからネットでこういうのも調べられる。
で、見事に検索でひっかかった。
けれど、
日付を観てみると、今年の1月のアタマごろ。
「あーっ、この正月に民放の深夜にやっていたんだーっ」
こんなに便利なヨノナカなのに、
なんてタイミングの悪いワタシなんだ。
そうなるとますます観たい。
観たいったら観たい。
しばらくは、
「夏の庭」に、
恋こがれます。
そんなこんなです。